最新のIPCC報告書〜おさえておくべき9つのポイント〜

 IPCC(気候変動に関する政府間パネル)  が、地球温暖化と気候危機に関して、科学に基いた、 画期的な最新の報告書を発表したことが話題になっています。目をそむけたくなるような現実も明らかにされていますが、一方で一筋の光も読み解けます。ここでは分かりやすくIPCC報告書と気候変動に関する情報を9つのポイントにまとめました。

1.明らかになる衝撃的なデータ

  • 二酸化炭素濃度:過去200万年で最高
  • 気温:この10年は過去12万5000年でもっとも暑かった
  • 海面上昇:過去3000年で最速
  • 北極の氷の厚さ:過去1000年で最低

2.人為的であることは「疑いの余地がない」

IPCCの科学者によると、人間の活動が気候変動の原因であることに「疑いの余地はなく」、温暖化ガス排出のほとんどは特に化石燃料の採掘、輸送と燃焼、そして農業と家畜に由来しています。 

3.メタンの影響は二酸化炭素の88倍

気候変動の主な原因は二酸化炭素です。しかし、短期的な影響を見るとメタンによる影響が大きいです。メタン(化石ガス)は短期的には、二酸化炭素より気候変動への影響は88倍。化石ガスはボイラー用の燃料に多く使われており、恒常的にフラッキング(水圧破砕法)やガスパイプラインからも漏れ続けています。

4.気候変動を止められるのは「今」

温度上昇を1.5℃以内に抑えるためには、与えられた課題をすべてこなし、さらにそれ以上努力することが必要です。排出量が急速に減らなければ、13年以内に500Gtという炭素予算は燃やし尽くしてしまいます。いま化石燃料をやめること以外に、問題解決の糸口はありません。

5.2100年に海面が0.5〜1m上昇

どのシナリオにおいても海面の上昇は避けられません。2100年時点での最低の上昇は0.5メートル、最高で1メートル。さらに、排出量が多いシナリオでは2300年までに15メートル以上の海面上昇、という可能性まで示唆されています。

6.現在の対策では3℃以上の上昇

この状況を打破、少なくとも最小限に抑える対策は取られているのでしょうか?残念ながら、現在の排出量の傾向のままだと3℃以上になることが分かっており、各国の気候変動対策がもし実施された場合でも、2.4℃程の上昇が予測されています。(異なる気候変動対策に関する温度上昇の予測についてはこちらを参照してください)

7.復興基金のクリーンエネルギーへの移行はわずか2%

世界各国が掲げる新型コロナ危機からの復興計画のために用意された莫大な予算は気候危機の解決に振り向けられているのでしょうか? I IEAによると、復興基金の2%しか今のところクリーンエネルギーには移行していないことが明らかになっています。

8.化石燃料業界の宣伝活動が続く

化石燃料業界は気候変動へのリスクを、何十年も前から認識していたことが分かっています。気候変動へのリスクを認識した上で情報を伏せ、業界による、ロビーイング、広告等による宣伝活動は、科学における議論にまで混乱を生じさせ、必要な対策を遅らせてきました。https://twitter.com/billmckibben/status/1424731664635383808?s=20

9.半世紀前から分かっていた事実

気候危機はここ数年で突如現れたのではありません。また、その進行も現段階では避けられないものでもありません。現在地球の大気中にある二酸化炭素の約半分はここ30年で排出されたものです。1980年代から地球温暖化・気候変動は明らかになっていましたが、様々な誤った情報・行動への遅れが、今、多くの人の命を奪う事態につながってしまっています。

データが明らかにするのは悲惨な未来ばかりですが、人は地球温暖化を止めることができるのでしょうか?

答えはイエスです 。一定の気候への影響は避けられませんが、もし急速に脱炭素化し、メタンもゼロにすることができれば、気候変動の影響はかなり急速に(数世紀ではなく数十年以内に)大部分を無くすことができる可能性は残されています。

では、今何をすべきでしょうか? まず、「化石燃料へのあらゆる利用」にNOと伝えることから始めましょう。10年以内に化石燃料への依存から抜け出すことは可能です。化石燃料業界へのあらゆる投資と、新規化石燃料プロジェクトの全てを止めることから始めましょう。そして、何世紀もの間、自然と共に暮らしてきた先住民や、都市・地方各地の第一線のコミュニティに耳を傾け、脱化石燃料を達成した後の新しい暮らしや経済のあり方などを考えましょう。

まもなく、COP26(気候変動枠組条約第26回締約国会議)が始まり、各国の代表が集まります。脱化石燃料なくして、気候変動対策はありえません。「ネットゼロ」の約束に実効性は見込めないため、真のゼロが必要です。COP26にむけ、あらゆる地域・コミュニティから「脱化石燃料」の声を伝えましょう。

オリジナル文章: “Here’s what you need to know about the new IPCC report.” by claudiomagliulo
翻訳:リーガン美香
文章添削:350 Japan

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