レポート 2020年度┃3メガバンクのTCFD提言に沿った開示比較
公開:2020/09/24
更新:2020/10/30
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採点基準は各項目25点満点。小項目は0点(記載なし)、2.5点(関連する記載は見られるが改善の余地あり)、5点(記載あり)の3パターン。TCFD提言の推奨項目に加えて、先進事例を踏まえ、350 Japanが独自に加えた項目も含まれる。各行の気候関連リスク管理に関する開示の進展状況の比較と改善箇所を明確にすることを目的としており、必ずしも、各行の実施状況を反映したものではない。また、気候危機対策に伴う「機会」の捕捉よりも「リスク」の管理に重点を置いた分析としている。
総合評価 (150点満点)
TCFDレポート
TCFDレポートの公表 |
CEOメッセージ
パリ協定の目標への整合性 | ||||
1.5度目標への言及 | ||||
トップリスク認定 | ||||
ステークホルダーエンゲージメントの重視 | ||||
継続的な取り組み強化 |
該当箇所とコメント
該当箇所
サステナビリティへの取り組み 私どもの企業価値を持続的に高めていくためには、自らの価値のみならず、株主、お客さま、従業員、社会等、さまざまなステークホルダーに対して新たな価値を創造していくことが必要です。そうした観点から、〈みずほ〉にとってのサステナビリティとは、私どもの持続的な成長とともに、それを通じて環境の保全および内外の社会・経済・産業の持続的な発展・繁栄を目指していくことと定め、基本的な考え方や戦略推進方法を策定し、グループ一体で取り組みを進めています。 気候変動については、金融市場の安定にも影響を及ぼしうる最も重要なグローバル課題の一つと認識しており、環境・気候変動への対応を経営戦略における重要課題として位置づけ、取り組みを継続的に強化しています。 そうした中で重要となるのは、ステークホルダーとの対話であり、エンゲージメントです。本年4月に環境・社会に配慮した投融資の取組方針の厳格化を行いましたが、これにあたっても、お客さまをはじめとしたさまざまなステークホルダーと対話を積み重ねることによって、お客さまの事業戦略を深く理解したうえで、私どもの考え方を丁寧に説明し、ご理解をいただきながら、「脱炭素社会」に向けてともに取り組む形で進めてきました。 また、エンゲージメントで重要なことは積極的な開示だと考えています。今般、統合報告書に加えて、TCFDレポートを発行しました。前提条件や検討結果を含めた積極的な開示を通じて、ステークホルダーの皆さまとの対話を進めています。 〈みずほ〉は、今後も、お客さま、投資家の皆さまをはじめとした幅広いステークホルダーとエンゲージメントを深めながら、皆さまからいただいた意見を真摯に受け止め、取り組みや開示の改善に努めるとともに、社内においても、規律をもって推進していきます。そして、私自身がCEOとしてリーダーシップを発揮し、この取り組みを深化させてまいります。
350 Japan コメント
「気候変動については、金融市場の安定にも影響を及ぼしうる最も重要なグローバル課題の一つと認識しており、環境・気候変動への対応を経営戦略における重要課題として位置づけ、取り組みを継続的に強化してい」るとしている。また、ステークホルダーとの対話・エンゲージメントを重視し、積極的な開示を通じて対話を行い、取り組みや開示の改善に努めるとし、CEOとしてリーダーシップを発揮すると明言している点は評価できる。一方で、パリ協定との整合性や1.5度目標への言及がなく、これらの目標が組織全体の経営戦略に充分に反映されない恐れがあり、気候危機リスク管理として不十分にならざるを得ないことが危惧される。
該当箇所
持続可能な社会を、お客さまとともに創る サステナビリティとは、現代の世代の誰もが経済的繁栄と幸福を享受できる社会を創り、それを将来の世代にしっかりと受け渡すこと、と捉えています。昨今、地球温暖化による気候変動やサプライチェーンにおける人権侵害等、さまざまな環境・社会問題がグローバルな規模で生じており、ファイナンスを通じてあらゆる産業の結節点となっている金融機関に期待される役割も極めて大きくなってきています。 我々は、事業を通じた社会的な課題の解決とSDGsへの取組を一層強化すべく、2020年4月に「SMBCグループ サステナビリティ宣言」を公表し、その遂行のための10ヵ年計画として「SMBC Group GREEN×GLOBE 2030」を策定しました。具体的なアクションプランとして、2030年までの10年間で、環境分野では、グリーンファイナンス10兆円の実行や三井住友銀行のCO2排出量の30%削減を目指すほか、社会分野では、ファイナンシャル・インクルージョンの実現に向けた金融リテラシー教育を150万人に実施するとともに、アジア新興国におけるリテール金融サービスの拡大等に取り組んでいきます。また、ガバナンス分野では、サステナビリティ経営を支える基盤として、コーポレートガバナンス、リスクガバナンスの不断の高度化を進めていきます。 しかし、こうした取組は我々だけでは限界があり、個人・法人のお客さまを巻き込んで大きな潮流を作ることが重要です。先般立ち上げた環境・社会課題解決に取り組むコミュニティプラットフォーム「GREEN×GLOBE Partners」を通じ、環境や社会に関連する情報提供やセミナー開催に加え、参加者同士のマッチングや、社会課題解決に資するプロジェクトの立ち上げ等に取り組むことで、持続可能な社会をお客さまとともに創っていきます。
350 Japan コメント
「昨今、地球温暖化による気候変動等がグローバルな規模で生じており、ファイナンスを通じてあらゆる産業の結節点となっている金融機関に期待される役割も極めて大きくなって」いるとしつつも、最重要課題との明確な位置づけはなされていない。「事業を通じた社会的な課題の解決とSDGsへの取組を一層強化すべく、サステナビリティ宣言を公表し、その遂行のための10ヵ年計画としてSMBC Group GREEN×GLOBE 2030を策定」したとあるが、パリ協定と1.5度目標への言及はなく、気候危機リスク管理としての実効性が危惧される。
また、環境・社会課題解決に取り組むコミュニティプラットフォームの立ち上げなど、顧客へのエンゲージメントを強化しようとしている姿勢は評価できるものの、気候危機に立ち向かうために、顧客のみならず幅広いステークホルダーとの協働を期待する。また、ガバナンス分野で不断の高度化を進めるとしているが、気候リスク管理全体の継続的な取り組み強化が求められる。
該当箇所
社会課題解決への貢献をめざして 今回のコロナ禍を機に、今まで以上に企業の存在意義として社会課題の解決力が問われる時代へと変化しています。私たちも、社会インフラを担う金融機関としての存在意義を改めて認識したと同時に、社会課題解決と経営戦略との一体化をより進め、持続的な成長への道筋を示していくことが求められていると感じています。 社会課題解決への貢献においては、ESGのうち、E(環境)の重要性、すなわち金融機関として気候変動への対応をさらに推し進めていく必要があることに加え、今まで以上にS(社会)への貢献が問われています。 MUFGは、これまで、本業であるファイナンスを通じてさまざまな取り組みを行ってきました。2019年に日本の金融機関として初めて、サステナブルファイナンスの数値目標を設定し、「環境分野」では、再生可能エネルギー事業向け融資、グリーンボンドの引受・販売などに、「社会分野」では、スタートアップ企業の育成や雇用の創出、貧困の改善に資する事業へのファイナンスなどに積極的に取り組んでいます。2019年度から2030年度までに累計20兆円の実行をめざしており、初年度の実績は3.7兆円と順調に推移しています。 また、ファイナンスに関しては、環境・社会への配慮を実現するための枠組みとして「MUFG環境・社会ポリシーフレームワーク」を定めています。昨年度の改定では、新設の石炭火力発電所へのファイナンスは原則として実行しないと表明していますが、これに続き、今年度は新たに対象セクターを拡大しました。今後も、定期的に見直しを行い高度化を図っていきます。 (中略)こうした取り組みをさらに進めていくため、今年度より、チーフ・サステナビリティ・オフィサーを設置し、社内の推進体制を強化しました。環境・社会課題を起点としたビジネスのあり方を改めて整理することで、サステナビリティ重視の経営を加速していきます。"
350 Japan コメント
「社会課題解決への貢献においては、ESGのうち、E(環境)の重要性、すなわち金融機関として気候変動への対応をさらに推し進めていく必要がある」としているが、最重要課題としての認識は示されていない。また「今後も、定期的に見直しを行い高度化を図ってい」くことが期待されるが、昨年度の方針改訂に続き、「今年度は新たに対象セクターを拡大した」としているものの、対象セクターのファイナンスの制限には至っておらず、気候危機の対策強化に必要なスピード感が伴っていないことが危惧される。
また、パリ協定との整合性、1.5度目標への言及はなく、ステークホルダーとのエンゲージメントにも触れられておらず、気候危機リスク管理の実効性に疑問が残る。
Our general ambition is to align all of our activities with the climate objectives of the Paris Agreement. It is a long-term endeavour. We are firmly committed to this target but there is still a long way to go, both for us and for society as a whole. Regarding the management of climate-related risks, we have already made promising progresses. To date BNP Paribas remains the only bank to exclude financing of companies specialising in non-conventional hydrocarbons (shale gas, tar sands, etc.) and is part of the small group of banks having a precise timetable for exiting thermal coal. We keep on working to be able to analyse the environmental footprint of our entire loan portfolio—that of companies today and that of individuals tomorrow—and direct it so it aligns progressively with the objectives of the Paris agreement. We see the energy transition above all as a tremendous source of opportunities. I am deeply convinced that a bank financing the 21st century must act as an accelerator of the energy transition. That is why BNP has rallied as a group for the last several years to offer all its clients, spanning all the Group’s business lines and countries of operation, a range of products and services to help them achieve their own energy transition. We are developing sustainable-banking solutions. This approach, far from addressing only the most ‘green’ or climate-aware customers, must be at the heart of our business proposition and help the world make a large-scale transition in favour of the climate. Reducing these risks and seizing these opportunities requires a real transformation in the way we work and, more generally, in society as a whole. This transformation should be the fruit of collective effort. This is why we work constantly with our customers, companies, investors, individuals, with the companies in which we invest, with public authorities, with academics and scientists, with NGOs and all of civil society to succeed together in this transformation towards a model of sustainable society, compatible with the climate objectives of the Paris Agreement.
3行とも気候変動への対応に触れているものの、最重要課題として明記しているのはみずほFGのみである。なお、パリ協定および1.5度目標への言及(注4)は3行とも見られなかった。対照的に、BNPパリバはCEOメッセージばかりでなく、TCFDレポート全体を通じて、パリ協定や1.5度目標との整合性に繰り返し言及している。
(追記:MUFGはサステナビリティレポート冒頭のCEOメッセージで、責任銀行原則(PRB)の説明内においてはパリ協定に触れている。)
ガバナンス
取締役会および経営層によるパリ協定と整合的な目標に対するモニタリング | ||||
経営層への責任付与 | ||||
専門的知見の登用 | ||||
報酬体系と気候関連パフォーマンスとのリンク | ||||
組織全体への浸透/社員教育の徹底 |
該当箇所とコメント
"持株会社であるみずほフィナンシャルグループが、グループのサステナビリティへの取り組みを統一的に推進しています。具体的には、グループ会社に対し、中期経営計画・業務計画において定めた「サステナビリティ重点項目」(マテリアリティ)を提示し、各社が取り組みを推進するために必要な指示を行います。また、グループ会社は「サステナビリティ重点項目」を踏まえて中期経営計画・業務計画を策定するとともに、みずほフィナンシャルグループに取り組み状況等を報告します。 <2019年度の取締役会での決議・報告内容> ■ 決議:「みずほの企業行動規範」の改定、「環境方針」の制定、「サステナビリティへの取り組みに関する基本方針」 の改定、サステナビリティ重点項目 ■ 報告:「環境・社会に配慮した投融資の取組方針」の改定、TCFD提言への対応状況 (以下、統合報告書のTCFD提言への取り組み状況より) ・戦略と一体的にサステナビリティへの取り組みを推進するため、経営会議・取締役会での議論を経て、気候変動への対応を含む「サステナビリティ重点項目」を特定し、5カ年経営計画に組み込み、年次で見直しを実施。 ・「環境方針」を制定し、取締役会監督のもと、TCFD提言への対応状況を含む環境への取り組み進捗等を評価。 (以下、「環境方針」ガバナンス・マネージメント体制より抜粋) 〈みずほ〉は、環境に関連するリスクと機会を戦略に組み込み、適切なマネジメントに努めます。 みずほフィナンシャルグループは、持続可能な社会の実現に向け、着実な取り組み推進のための体制を整えます。具体的には、環境への取り組み状況等について、定期的に取締役会に報告を行います。また、環境への取り組みに関する指標・目標を設定し、その進捗の定期的な評価・見直しを通じて、継続的な改善を図ります。 "350 Japan コメント
グループ一体としてサステナビリティに対する取り組みを推進する姿勢を明確にし、取締役会の監督ならびに決議・報告内容を明示し、経営層を含む執行体制を明らかにしている点は評価できる。また、定期的な目標の見直し、継続的な改善にコミットしている点も評価できる。邦銀として初めて、石炭火力発電所向けの与信残高の削減目標を掲げたことは評価できる一方で、目標がパリ協定に整合しないという批判が根強い。パリ協定との整合性を確保するために、取締役会がどのように目標の妥当性を判断し、リスクを管理するのかが必ずしも明確ではない。
"(統合報告書より) SMBCグループでは、グループCEOを委員長とする「サステナビリティ推進委員会」を設置し、経営トップの強いコミットメントの下、サステナビリティ経営を推進しています。 SMBCグループでは、これまで以上に社会の健全な発展に貢献していく姿勢を明確化するため、経営理念に、「社会課題の解決を通じ、持続可能な社会の実現に貢献する」を追加しました。 経営理念の改定と併せ、持続可能な社会の実現を目指す上での基本姿勢として、新たに「SMBCグループ サステナビリティ宣言」と、2030年までの10年間の計画として「SMBC Group GREEN×GLOBE 2030」を策定し、サステナビリティの実現を目指しています。 ●「グループ環境方針」の制定 ●「サステナビリティ推進委員会」において、気候変動対応を経営戦略へと反映 ● 経営会議や、取締役会の内部委員会である「リスク委員会」において、気候変動リスクに関する報告を実施 (TCFDレポートより) ① 取締役会・リスク委員会(監督) 三井住友フィナンシャルグループの取締役会は、経営の基本方針等、法令上取締役会の専決事項として定められた事項の決定および執行役・取締役の職務の執行の監督を主な役割としています。また、取締役会の監督機能の一段の強化および業務執行の迅速化等を目的として、専決事項として定められている事項以外の業務執行の決定を、原則として執行役に委任しています。 TCFD 提言への対応に関する取組は、定期的に取締役会に報告され、監督が行われています。 また、取締役会の内部委員会であるリスク委員会では、取締役会の委嘱を受け、環境・リスク認識とリスクアペタイトの運営、リスク管理に係る運営体制に関する事項、その他リスク管理上重要な事項を審議し、取締役会に助言をしております。 ② 経営会議・サステナビリティ推進委員会(執行) TCFD 提言への対応に関する取組は、グループ経営会議・サステナビリティ推進委員会での決定を踏まえて当社グループの事業戦略に反映されます。 三井住友フィナンシャルグループは、取締役会の下に、グループ全体の業務執行および経営管理に関する最高意思決定機関として、グループ経営会議を設置しています。グループ全体の SDGs や ESG に関する推進施策は企画部サステナビリティ推進室が企画・立案し、グループ経営会議で協議されるほか、具体的な内容については「サステナビリティ推進委員会」においても審議・決定がなされます。本委員会はグループ CEO を委員長とし、トップコミットメントのもとで「非財務的視点」を軸としたサステナビリティ経営を推進していくことを目的として設立されたものであり、気候変動対応についても協議されています。 キャパシティビルディング(リスク管理:P.20) SMBC グループは、全従業員が ESG/SDGs に関する十分な知見を持ち、お客さまとのコミュニケーション強化を図ることを目的として、社内研修を拡充すると共に、サステナビリティに関する研修を体系化した枠組みである「サステナビリティユニバーシティ」を導入する予定です。この枠組みは、経営会議役員を含む全従業員のサステナビリティへの認識を深めることで気候変動に対する理解度向上にもつながり、気候変動リスクの適切かつ効果的な評価、管理に寄与すると考えています。"350 Japan コメント
“グループCEOを委員長とする「サステナビリティ推進委員会」を設置し、そこでの議論や経営会議での決定を踏まえ、事業戦略に反映し、取組内容について定期的に取締役会に報告がなされる、また取締役会の内部委員会である「リスク委員会」で気候変動リスクに関する報告を実施、また、サステナビリティ推進室がSDGs, ESG推進施策を企画・立案し、グループCSOの監督に基づき実行するとしている。取締役会への報告の頻度や経営戦略への具体的な落とし込みのさらなる詳細な開示が期待される。(例えば、TCFD提言には、取締役会が次の事項に関する気候変動関連事項を考慮しているか挙げられている。戦略、主要な行動計画、リスクマネジメント方針、年度予算、事業計画ならびにパフォーマンス目標の設定、実施とパフォーマンスのモニタリング、主要な資本的支出や買収、資産売却(ダイベストメント)。)また、パリ協定との整合性を確保するために、取締役会がどのように目標の妥当性を判断し、リスクを管理するのかが必ずしも明確ではない。 経営会議役員を含む全従業員のサステナビリティへの認識を深めることで気候変動に対する理解度向上を目指したキャパシティビルディングに力を入れていることは評価できる。 ”
該当箇所
" MUFGは、サステナビリティへの取り組みを経営の最重要課題の一つと位置づけています。持続可能な環境・社会がMUFGの持続的成長の大前提であるとの考えのもと、社会課題の解決とMUFGの経営戦略を一体と捉えた価値創造に取り組んでいます。 具体的には、各事業本部の戦略に、環境・社会課題の解決に資する取り組みを掲げ、再生可能エネルギー向け融資やお客さまのサステナビリティ向上の支援を行っています。リスク管理の観点では、ファイナンス(与信、株式・債券の引受)において環境・社会配慮を実現するための枠組み「MUFG環境・社会ポリシーフレームワーク」を定め、社内規則に組み込み、徹底を図っています。 MUFGの環境・社会課題への取り組みは、「サステナビリティ委員会」で審議され、審議内容は取締役会および経営会議に付議・報告されています。また、環境・社会分野の社外アドバイザー2名を招聘し、専門的見地から同委員会・取締役会メンバーへの助言・提言をいただいています。 2020年5月には、取り組みの推進強化と責任の明確化を目的に、チーフ・サステナビリティ・オフィサー(CSuO)を設置しました。経営企画・戦略担当役員が兼務することで、社会課題の解決と経営戦略との一体化を図っていきます。 MUFGでは、気候変動を含む環境・社会にかかる機会およびリスクへの対応方針・取り組み状況を経営会議傘下のサステナビリティ委員会にて定期的に審議するとともに、テーマに応じてリスク管理委員会や投融資委員会、与信委員会においても審議・報告を行っています。各委員会の審議内容は経営会議への報告後、取締役会において報告・審議され、取締役会が気候変動への取り組みを監督する態勢としています。 取締役会での審議報告事項(2019年度) ● サステナビリティの取り組みにおける課題、対応の方向性・推進力を高めるガバナンスの強化・高度化 ・ESG・SDGsと経営戦略の一体化 ・本業を通じた取り組み/自社の取り組み ・TCFD提言に基づくシナリオ分析結果をはじめとした情報開示の拡充 ● 統合的リスク管理(トップリスク管理)における気候変動に関するリスクの整理"
350 Japan コメント
サステナビリティへの取り組みを経営の最重要課題の一つと位置付け、経営企画・戦略担当役員であるチーフ・サステナビリティ・オフィサー、グループCEO、担当役員などをメンバーとする「サステナビリティ委員会」で気候変動リスクへの対応方針・取り組みについて定期的に審議し、審議内容は取締役会、経営会議に付議・報告されること、社外アドバイザー2名が助言を行う体制を築いていることは評価できる。一方で、取締役会への報告の頻度や審議報告事項の詳細、パフォーマンス目標設定を含む経営戦略への具体的な落とし込み等、より詳細な開示が求められる。(TCFD提言には、取締役会が次の事項に関する気候変動関連事項を考慮しているか挙げられている。戦略、主要な行動計画、リスクマネジメント方針、年度予算、事業計画ならびにパフォーマンス目標の設定、実施とパフォーマンスのモニタリング、主要な資本的支出や買収、資産売却(ダイベストメント)。)また、パリ協定との整合性を確保するために、取締役会がどのように目標の妥当性を判断し、リスクを管理するのかが必ずしも明確ではない。
"気候変動の緩和活動も含めた環境的社会的責任事項や戦略、気候リスク管理に関して、取締役会に助言をしたり補佐をする、専門的知見を備えた独立取締役の所属する委員会(CGEN)および社内リスク・コンプライアンス管理委員会(CCIRC)を設置。 The Board of directors determines BNP Paribas’ strategy and objectives, based on the proposal put forward by the General Management, with the aim of promoting long-term value creation that is mindful of social and environmental considerations. It is regularly informed of the Bank’s CSR policy, placed under the aegis of the 17 Sustainable Development Goals (SGDs) of the United Nations (UN) Organisation. The Corporate Governance, Ethics, Nominations and CSR Committee (CGEN) comprises independent directors, some of whom have extensive experience with CSR and climate-related issues due to their professional activity: members include a renowned biodiversity specialist and a CEO deeply involved in the energy transition. The Committee is responsible for overseeing issues relating to social and environmental responsibility, including mitigation of climate change. The Internal Control, Risk and Compliance Committee (CCIRC) advises the Board of directors on the suitability of BNP Paribas’ overall strategy and on its risk appetite. ... These indicators are monitored in the risk dashboard presented to CCIRC; one of these indicators is directly linked to climate-related risks: the primary and secondary mixes in terms of energy transition. In 2019, the CCIRC examined the strategic report on the energy transition prepared by the specialised engineers of the Industry Research Department (EIS) of the Risk Function. 執行役員の報酬と気候関連パフォーマンスのリンク The compensation paid to corporate officers includes an annual variable component associated with criteria that are representative of the Group’s earnings, CSR criteria (10%) and a qualitative assessment performed by the Board of directors (15%). 社員教育 (P.25) While it is always necessary to have employees specialised in climate-related issues in charge of coordinating efforts, it is also important for all employees to incorporate climate-related risks and opportunities in the work they do each and every day. It is vital to raise awareness and train employees, in both their personal and professional lives, to ensure that climate-related risks and opportunities are well-integrated in all Group business lines. Accordingly, BNP Paribas has in recent years increased the number of training and awareness-raising sessions on climate-related issues, tailored to different audiences, for all its employees""
戦略
短期・中期・長期の気候関連リスクと機会の記述 | ||||
炭素関連資産に対する与信エクスポージャーの集中度 | ||||
気候関連リスクと機会が事業、戦略、財務計画に及ぼす影響 | ||||
シナリオ分析(移行リスク・物理的リスク)の実施と比較可能なプロセスの記述 | ||||
シナリオ分析のスコープ(対象地域、対象事象)の広さ |
該当箇所とコメント
該当箇所
● 経営計画策定時に、カンパニー・ユニット・グループごとに気候関連のリスクと機会を特定 ● セクター別に、短・中・長期の時間軸で、気候変動に伴う機会・移行リスク・物理的リスクを定性的に分析 ● 気候関連のリスクと機会、事業活動への影響を以下の通り認識し、脱炭素社会への移行に向けてサステナブルビジネスをグループ一体で推進する体制を強化。気候変動の緩和・適応に貢献する金融商品・サービスの提供を積極的に推進するとともに、国際的な関心・動向等も踏まえ適切にリスクを管理 <機会> - 再生可能エネルギー事業へのファイナンス等やお客さまの脱炭素社会への移行を支援するソリューション提供等のビジネス機会の増加 - 適切な取り組みと開示による資本市場と社会的評価の向上等 <リスク> - 気候関連リスクとして、移行リスクと物理的リスクを認識 - 移行リスクは、炭素税や燃費規制といった政策強化や低炭素等の技術への転換の遅れにより影響を受ける投融資先に対する信用リスクや、化石燃料等へのファイナンスに対するレピュテーション悪化によるオペレーショナルリスク等を想定 - 物理的リスクは、異常気象による当社資産(電算センター等)の損傷に伴うオペレーショナルリスクおよび顧客資産(不動産担保等)の毀損による信用リスク等を想定 <シナリオ分析> - TCFD 提言が推奨する定義を踏まえて計測した炭素関連セクター向け信用エクスポージャー(EXP)が EXP 総額に占める集中度は 7.3% - 移行リスク分析・物理的リスク分析 (詳細はTCFDレポートP.17~P.22および本項「移行リスク・物理的リスク 比較」参照)
350 Japan コメント
「炭素関連セクター(「電力ユーティリティ」および「石油・ガス、石炭」セクター)向け信用エクスポージャー(EXP)がEXP総額に占める集中度は約7.3%」としているが、対象セクターについて、より詳細な内訳等を明確にすべきである。また、TCFD提言の定義では、再エネであっても環境破壊や温室効果ガス削減の観点から問題が多いとされているパーム油によるバイオマス発電や、農業、林業、その他土地利用による排出量(熱帯林の減少を含む)が除外されており、こうしたセクターへのエクスポージャーも含めていくべきである。
TCFD提言の銀行のための補足手引きでは、「銀行は、気候関連リスク(移行リスクおよび物理的リスク)が貸出およびその他の金融仲介事業に及ぼす、短期・中期・長期の影響を評価するために使用した測定基準(指標)を開示すべきである。当該測定基準(指標)の情報は、与信エクスポージャー、保有株式・債券、トレーディング・ポジションについて以下の項目別に関連付けることが望ましい:業種、地域、信用力(例:投資適格か投資不適格か、社内格付システム)、平均残存年数」とある。
移行リスクをシナリオ分析を用いて実施したことを評価。「電力ユーティリティと石油・ガス、石炭の国内セクターを対象(分析対象 EXP は前述した炭素関連セクター向け EXP の 40%:TCFDレポートより)に、国際エネルギー機関の持続可能な発展シナリオ等を用いた業績予想から2050年までの与信コスト増加額を試算(約1,200〜3,100億円)」としているが、なぜ炭素関連セクターの40%のみを対象にしたのか明らかではない。また、みずほの世界的なビジネス展開の現状を踏まえると、今後地域・セクターともにさらなるスコープの拡大が望まれる。
また、比較可能性、信頼性、明確性等の観点から、分析結果のみでなく、計算プロセスも含めた開示のさらなる充実を期待する。
物理的リスクについてもシナリオ分析を行ったことは評価できる。一方で、「台風・豪雨による風水害から生じる「国内担保不動産(建物)」の損傷と事業停滞に起因した〈みずほ〉の2050年までの与信コストへの影響を分析し、影響は限定的と確認(最大520億円)」としているが、みずほの定性評価において高リスクと評価された「農業・食料・林業」セクター向けの EXP は相対的に小さいことを理由に外されている(TCFDレポート)など、限定的である。地域・対象ともにスコープの拡大と計算プロセスも含めた開示の充実が望まれる。
また、1.5度目標の重大性に鑑み、今後1.5度シナリオのモデリングが進むにつれ、より厳しいシナリオ分析を取り入れることを期待。
なお、移行リスク分析において、「事業構造転換によって化石燃料依存事業からの脱却を推し進めた結果、中長期的には炭素コスト等の軽減効果が奏功して、業績の上押し効果が期待されること」などを踏まえて、「脱炭素社会への移行に向けて中長期を見据えて、お客さまとのエンゲージメント(建設的な対話)を行うことの重要性を改めて認識し」「気候変動対応の面からも今後エンゲージメントをより一層強化し、取り組み支援に資するソリューションの提供等ビジネス機会の捕捉や、リスク管理の強化につなげてい」くとしている点は評価できる。
該当箇所
(1) 気候変動に伴うリスク SMBC グループでは、気候関連問題の顕在化に伴う外部環境や業務環境の変化をあらかじめ想定し、様々な波及経路に基づいてリスク事象を洗い出すことで、当社グループへの財務的影響を特定しています。 当社グループの想定するリスク事象の概要、及び主な影響は以下の通りです。 ① 物理的リスク ● 急性的な気象現象と慢性的な気候変化 地球温暖化の進行は、台風・洪水等の急性的な自然災害の増加や、平均気温上昇に伴う降水量増加等の慢性的な気候変化をもたらす可能性があります。 【想定される当社グループへの主な影響】 本支店被災により事業が継続できないリスクや、対策・復旧によるコスト増加のリスクがあります。 また、自然災害によるお客さまの業績悪化や担保毀損に伴い、当社グループの与信関係費用の増加や預金が減少する等のリスクがあります。 ② 移行リスク ● 政策及び法規制の強化や技術・市場の変化 低炭素社会への移行は、炭素排出目標の厳格化や炭素税引上げを始めとする各国の規制強化を後押しする可能性があるほか、新たな技術・エネルギー源の導入や消費者嗜好の変化により産業構造の変化を促進する可能性があります。 【想定される当社グループへの主な影響】 炭素排出量抑制コストの増加や製品・サービスの需給環境の変化に伴い、一部のお客さまについては収益減少や既存資産等の減損により業績が悪化、当社グループの与信関係費用が増加する等のリスクがあります。また、セクター別方針等、業務戦略の見直しが必要となる可能性があります。 ● 企業の取組に対するレピュテーション 企業は低炭素社会に適合したビジネスモデル変革や炭素排出量抑制等の取組を求められております。ステークホルダーからの開示要請も高まっており、気候変動への取組が企業評価基準の一つになりつつあります。 【想定される当社グループへの主な影響】 気候変動への取組不足や情報開示要請への対応の遅れは、当社グループのレピュテーション悪化に繋がり、資金調達環境が悪化する等のリスクがあります。 (2) 気候変動シナリオ分析(詳細はTCFDレポートP.9~P.13) 物理的リスク ● RCP2.6シナリオ(2℃シナリオ)、RCP8.5シナリオ(4℃シナリオ)の下での水災発生時における想定与信関係費用を、三井住友銀行における国内の事業法人を対象として分析。2050年にかけて累計300~400億円程度となる見込み。 移行リスク ● IEAの持続可能な開発シナリオの下での想定与信関係費用を、三井住友銀行および海外現地法人におけるエネルギー、電力等のセクターを対象として分析。公表政策シナリオ対比、2050年にかけて単年度で20~100億円程度の増加となる見込み。 ● 炭素関連資産(電力・エネルギー等)エクスポージャー比率:貸出金の6.9%
350 Japan コメント
シナリオ分析を用いて物理的リスクを算定したことを評価。一方で、国内の水災に限っており、対象地域、スコープの拡大が期待される。また、分析プロセスに触れているものの、比較可能性、信頼性、明確性等の観点から、計算根拠も含めた開示のさらなる充実を期待する。
移行リスクについても、シナリオ分析を用いて算定したことを評価。分析プロセスに触れているものの、計算根拠も含めた開示のさらなる充実、またスコープの拡大、および高度化(1.5度シナリオに向けた取り組み等)を期待する。
炭素関連資産について、TCFD提言に沿った「エネルギー・ユーティリティ」の定義を用い、エクスポージャー比率を6.9%としているが、対象セクターのより詳細な内訳等を明確にすべきである。また、TCFD提言の定義では、再エネであっても環境破壊や温室効果ガス削減の観点から問題が多いとされているパーム油によるバイオマス発電や、農業、林業、その他土地利用による排出量(熱帯林の減少を含む)が除外されており、こうしたセクターへのエクスポージャーも含めていくべきである。
該当箇所
● 2019年度から2030年度までに累計20兆円(うち、環境分野で8兆円)のサステナブルファイナンスの実施。2019年度の実績は3.7兆円。 ● ファイナンスにおいて、環境・社会配慮を実現するための枠組みとして「MUFG環境・社会ポリシーフレームワーク」を定め、2019年度に新設の石炭火力発電所へのファイナンスは、原則として実行しないことなどを公表。2020年5月にも本フレームワークを改定し、オイルサンド、北極開発等のセクターを「ファイナンスに際して特に留意する事業」に追加。今後も、事業活動やビジネス環境の変化に応じて、定期的に見直し、高度化を図っていきます。 ● 分析対象および適用したシナリオや前提のもとで、移行リスク(エネルギーおよびユーティリティセクターの合計)および物理的リスク(水害)は、各々単年度ベースで数十億円程度と、いずれも影響は限定的であるとの結果となりました。 ・貸出ポートフォリオに占める炭素関連資産の割合は2020年3月末で6.2%(エネルギー2.8%、ユーティリティ3.4%)としている。なお、2019年3月末では6.6%(エネルギー3.0%、ユーティリティ3.6%)。貸出金額の総額は、96.5兆円(2019年3月末)、99.1兆円(2020年3月末)。TCFDの提言を踏まえ、エネルギーおよびユーティリティセクターに属する貸出から再生可能発電向けの貸出などを除外した貸出を炭素関連資産と定義。"
350 Japan コメント
今般、<MUFG>として初めて移行リスクおよび物理的リスクについてシナリオ分析を行なったことを評価。一方で、他行と同様に、物理的リスクは国内の水害に限定していることから、対象地域、スコープの拡大が望まれる。また、移行リスクに関しても同様である。TCFD提言では、「どのリスクと機会が組織に重要(マテリアル)な財務への影響を与える可能性があるかを判断するプロセスの記述」を推奨しており、エネルギー、ユーティリティセクター以外の影響を及ぼしうるセクターをどのように考慮したのか、説明が求められる。また、算定プロセスの概要には触れられているものの、検証可能性の観点から、算定根拠となる数値も含めたより詳細な開示が期待される。また、今後1.5度シナリオの導入が期待される。
昨年の開示と同様に、炭素関連資産をエネルギーとユーティリティのそれぞれの内訳を明らかにし、貸出金額の総額を公表しているのはMUFGのみである。ここから割り出されたエクスポージャーは約6兆円(エネルギー約2.7兆円、ユーティリティ約3.3兆円)となる。とりわけ石炭火力の座礁資産リスクの懸念が大きいため、サブセクター(石炭、ガス、石油等)も含めたさらなる開示が期待される。
また、TCFD提言の定義では、再エネであっても環境破壊や温室効果ガス削減の観点から問題が多いとされているパーム油によるバイオマス発電や、農業、林業、その他土地利用による排出量(熱帯林の減少を含む)が除外されており、こうしたセクターへのエクスポージャーも含めていくべきである。
パリ協定に整合的な時間軸での石炭フェーズアウト戦略+石炭関連企業からのダイベストメント(25%基準+拡張計画) In terms of thermal coal, the Group has set an exit deadline, in line with the SDS (Sustainable Development Scenario) scenario of the International Energy Agency (IEA), compatible with the climate goals of the Paris Agreement: In 2019 and in 2020, the Group strengthened its position on coal, announcing its plan to reduce its thermal coal exposure to zero by 2030 in OECD countries, and by 2040 in the rest of the world. The Group had already elected in 2017 not to finance any projects in the thermal coal sector. To work towards its gradual exit goal, BNP Paribas plans to step up its dialogue with corporate clients using coal to generate part of their electricity, in order to determine to what extent their projections are aligned with the Group’s exit goals by geographic area. BNP Paribas will no longer accept any new customers with a coal related revenue share of more than 25% and will end up terminating its relations with any companies developing new coal-based electricity generation capacities. As a result of making this commitment, BNP Paribas has excluded 124 corporations in the coal mining and coal-based power generation sectors. Starting in 2020, the implementation of this policy will quickly lead to a reduction of around half of the number of BNP Paribas corporate customers using coal for a share of their electricity generation. 石油・ガスセクターへの規制 In late 2017, the Group also adopted a global finance policy applicable to the exploration, manufacture and transport of unconventional hydrocarbons: • the Group has consequently severed its ties with companies whose main business is the exploration, distribution, marketing or trade of shale gas and oil and/or oil from tar sands; • the Group has also stopped funding projects predominantly involving the transport and exploration of shale gas and oil or oil from tar sands. Furthermore, the Group has undertaken not to finance oil and gas exploration or production projects in the Arctic. ...after implementing this sectoral policy, the Group discontinued the funding of a number of energy corporations in the United States, generating income losses of around €100 million. ...A total of 418 companies were placed on blacklist or watchlist in 2019, in accordance with Group sectoral policies. エネルギートランジッションを促すための議決権行使 BNP Paribas Asset Management uses its voting rights to influence the energy transition of portfolio companies In 2019, BNP Paribas Asset Management opposed 61 resolutions at 16 General Shareholders’ Meetings (vs. 16 times at 12 AGMs in 2018), primarily for climate change reasons. BNP Paribas Cardif applies a low-carbon filter to directly owned corporate stocks and bonds BNP Paribas Cardif launched a carbon rating that scores companies for their carbon emissions in absolute value terms (as reported in the CDP16), with scores ranging from “A” (emissions < 100 ktCO2e) to “D” (emissions > 10 MtCO2e). The energy transition strategies of companies with a score of “C” or “D” are also rated (from 0 to 100) according to three criteria: relevance of energy transition policies, consistency of policy deployment, and effectiveness of policy results. Companies (or issuers) with an “energy transition rating” of less than 30 are excluded from the investment universe. BNP Paribas uses climate scenarios (P.28) For past years and on a forward-looking basis, BNP Paribas compares the change in its electricity mix loan book with the change in the same mix in the SDS, and particularly the percentage of coal in the electricity mix. 移行リスク、物理的リスクのほか、信用リスク(liability risk)も特定。 liability risks can also arise from both of these risk categories. They include the damages and interest a legal entity would have to pay if found liable for global working or for failing to anticipate its effects as it could and should have done. In keeping with international efforts, and especially those of the NGFS, BNP Paribas considers the risks associated with the advent of climate-related court proceedings for corporates and investors, for example liability risks, as a subset of physical and transition risks. サンプルクライアントの物理的リスク分析を実施。3つのリスクを特定。operational risks, supply chain risks (upstream) and risks of market share losses (downstream).対象は、物理的リスクに晒されている9つのセクター(Utillities, Technology Hardware&Equipment, Transporation, Semiconductors, Pharma Biotech&Life Science, Matrials, Automobiles&Components, Capital Goods, Food&Staples Retailing)へのエクスポージャーが高い上位10企業ずつ。100点満点のうち全体で42点となり、リスクは比較的低いと分析されている。この結果、半導体、機械・デジタル機器、製薬セクターでリスクが高く、前者2セクターはバリューチェーンが物理的リスクの高いアジア地域で生産されていること、製薬セクターでは水、エネルギーの利用に依存していることなどが理由としてあげられている。また、Water stress, Heat stress, Floodsのリスクに晒される危険が高いと分析されている。
3行とも、移行リスク・物理的リスクに関するシナリオ分析の実施の面で進展が見られた。物理的リスクについては国内の水害に限るなど、対象地域・対象事象について、さらなるスコープの拡大が望まれる。また、検証可能性の観点から、算出根拠のより詳細な開示が期待される。移行リスクについてはTCFD提言で定義される炭素関連資産(電力、エネルギーセクター)を対象としているが、同様の進展が望まれる(注5)。また、用いられている国際エネルギー機関(IEA)の持続可能な開発シナリオ(2度シナリオ)は、CCUS(二酸化炭素回収・利用・貯留)の使用を前提とした非現実的なシナリオであることを踏まえ(注6)、国際的な主流である1.5度シナリオの導入が望ましい。なお、TCFD提言の定義では、再エネであっても環境破壊や温室効果ガス削減の観点から問題が多いとされている、パーム油によるバイオマス発電や、農業、林業、その他土地利用による排出量(熱帯林の減少を含む)が除外されており、こうしたセクターへのエクスポージャーも含めていくべきである(注7)。
リスク管理
気候関連リスクを特定・評価・管理するプロセスおよび統合的リスク管理への統合について説明 | ||||
トップリスク認定 | ||||
気候関連リスクの管理が組織全体の日常のビジネス業務に組み込まれているか | ||||
リスク管理手法とパリ協定との整合性 | ||||
ステークホルダーエンゲージメントの重視 |
該当箇所とコメント
該当箇所
● 気候変動リスクの特定、総合リスク管理への統合 − 気候変動に起因する物理的リスクや移行リスクを認識し、信用リスク管理やオペレーショナルリスク管理等の総合リスク管理の枠組みで対応する態勢を構築(リスクの要因別に「信用リスク」、「市場リスク」、「流動性リスク」、「オペレーショナルリスク」等に分類し、各リスクの特性に応じた管理) ●トップリスク運営 − 当グループに重大な影響を及ぼすリスクを経営で認識する「トップリスク運営」において、「環境・社会に配慮しない投融資」へのモニタリングを継続。今般、顕在化は中長期的な時間軸であっても数年内に対応が求められる重大なリスクである「エマージングリスク」として気候変動リスクを位置付け、関連指標を定期的にモニタリング ● 気候変動リスクを踏まえた取組方針の見直し等 − 環境・社会に配慮した投融資の取組方針(石炭火力発電所向け方針厳格化等)の見直しやエクエーター原則に基づくデューデリジェンスの実施、お客さまとのエンゲージメントの実施等を通じてリスクを管理
350 Japan コメント
「グループに重大な影響を及ぼすリスク認識を選定するトップリスク運営において、気候変動リスクを「顕在化は中長期的な時間軸であっても数年内に対応が求められる重大なリスク」等である「エマージングリスク」として選定し、気候変動リスクに係るモニタリングを開始し」、取締役会への四半期ごとの報告とさらなる改善にコミットしていることは評価できる。また、TCFD提言の銀行のための補足手引きで推奨されている「信用リスク、市場リスク、流動性リスク、オペレーショナル業務リスク等のリスク分類の明示」を3メガバンクの中で唯一行なっている点は評価できる。一方で、具体的なモニタリング方法の開示やモニタリング結果の公表に関しては記載がなく、さらなる開示を期待する。
科学の知見では、パリ協定の1.5度目標達成のためには、新規の石炭火力発電所の建設は許容できず、既存のものも含めて2030年までに(世界では2040年までに)全廃すべきとされている、また、新規の化石燃料設備の建設も許容できないとされている。現行のポリシーでは、石炭火力発電所の新規建設を資金使途とする投融資等を行わないとしているものの、支援表明済み案件やリプレースメント案件、次世代技術等、例外を設けている。また、石炭採掘、石油・ガスセクターにおいては取引先とのエンゲージメントを通じた対応状況の確認に留まっている。これらのポリシーは科学の知見に沿ったリスク管理として不十分だが、どのようなプロセスを経て現行のポリシーに関する判断がなされたのか、またリスク管理として<みずほ>が十分だと考える根拠は何かの記述がない。今後さらなるポリシーの厳格化(石炭火力のバリューチェーン全体に及ぶコーポレートファイナンスへの規制、1.5度目標と整合的なフェーズアウト戦略を含む)を期待するとともに、判断プロセス・根拠の開示も期待する。
該当箇所
(1) リスク・アペタイト・フレームワーク SMBC グループでは、収益拡大のために取る、あるいは許容するリスクの種類と量(リスクアペタイト)を明確にし、グループ全体のリスクをコントロールする枠組として、「リスク・アペタイト・フレームワーク」を導入しています。 当社グループのリスク・アペタイト・フレームワークは、業務戦略とともに経営管理の両輪と位置付けられており、経営陣がグループを取り巻く環境やリスク認識を共有した上で、適切なリスクテイクを行う経営管理の枠組です。 具体的なプロセスとしては、業務戦略・業務運営方針の策定にあたり、経営上、特に重大なリスクを「トップリスク」として選定した上で、ストレステストによるリスク分析を実施し、リスクが顕在化した場合の影響も踏まえながら、リスクアペタイトを決定しています。 (2) トップリスク トップリスクの選定にあたっては、リスク事象を幅広く網羅的に収集し、想定されるリスクシナリオが発生する可能性や経営に与える影響を評価した上で、グループ経営会議等で活発な議論を行っています。 SMBC グループは、気候変動リスクの波及経路および当社グループに与える影響を整理したうえで、異常気象に伴う大規模災害の発生や低炭素社会への移行による産業構造の変化といった気候変動に関する事象を、トップリスクと位置付けております。 (3) 気候変動に影響を与えるセクターに関する方針 SMBC グループは、環境や社会へ大きな影響を与える可能性が高い事業・セクターに関する方針を、グループ主要子会社(三井住友銀行、SMBC 信託銀行、三井住友ファイナンス&リース、SMBC 日興証券)において、それぞれのビジネスに沿う形で導入しています。 (4) エクエーター原則に基づく環境社会リスク管理 三井住友銀行は、民間金融機関の環境・社会配慮基準である「エクエーター原則」を 2006 年1 月に採択し、環境・社会に多大な影響を与える可能性がある大規模プロジェクトへの融資に対して、国際環境室にてデューデリジェンスを通した環境社会リスク評価を実施しています。これにより、プロジェクト事業者に対してTCFD 対応を求めつつ、リスクの特定、管理に努めてまいります。 (5) 非財務情報の把握 三井住友銀行は、お客さまの財務情報に加えて、ESG に代表される非財務情報を把握することにより、お客さまの事業活動による環境や社会への影響を認識し、与信判断における支援の妥当性を定性的に判断する要素として活用しています。非財務情報の収集を通したお客さまとの対話により、気候変動に対するお客さまの考え方への理解を深めつつ、問題意識の共有に努めています。環境・社会への配慮に向けた取組を積極的に支援しつつ、懸念されるリスクについてはお客さまとともに改善に努めてまいります。 (6) キャパシティビルディング SMBC グループは、全従業員が ESG/SDGs に関する十分な知見を持ち、お客さまとのコミュニケーション強化を図ることを目的として、社内研修を拡充すると共に、サステナビリティに関する研修を体系化した枠組みである「サステナビリティユニバーシティ」を導入する予定です。この枠組みは、経営会議役員を含む全従業員のサステナビリティへの認識を深めることで気候変動に対する理解度向上にもつながり、気候変動リスクの適切かつ効果的な評価、管理に寄与すると考えています。
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気候変動リスクをトップリスクの一つと位置付けストレステストによる影響分析を実施していることは評価。ストレステストによる影響分析のプロセスや結果の公表を期待。また、リスク管理のプロセスについて、頻度や具体的なモニタリング方法等について、さらなる開示を期待する。
科学の知見では、パリ協定の1.5度目標達成のためには、新規の石炭火力発電所の建設は許容できず、既存のものも含めて2030年までに(世界では2040年までに)全廃すべきとされている、また、新規の化石燃料設備の建設も許容できないとされている。現行のセクターポリシーでは、新設の石炭火力発電所への支援は原則として実行しないとする一方で、超々臨界圧、ポリシー改定前より支援をしている案件を例外としている。また、石炭採掘、石油・ガスセクターにおいては環境社会リスク評価の範囲を拡大することに留まっている。これらのポリシーは科学の知見に沿ったリスク管理として不十分だが、どのようなプロセスを経て現行のポリシーに関する判断がなされたのか、またリスク管理として<SMBC>が十分だと考える根拠は何かの記述がない。今後さらなるポリシーの厳格化(石炭火力のバリューチェーン全体に及ぶコーポレートファイナンスへの規制、1.5度目標と整合的なフェーズアウト戦略を含む)を期待するとともに、判断プロセス・根拠の開示も期待する。
該当箇所
<統合的リスク管理> MUFGは、気候変動に起因するリスクを、今後約1年間で最も注意すべきリスク事象(トップリスク)の一つとして位置付けています(P.85ご参照)。 <ファイナンスでの環境・社会にかかるリスクの管理> MUFGは、「MUFG環境・社会ポリシーフレームワーク」により、石炭火力発電や鉱業(石炭)、石油・ガス等、気候変動を含む環境・社会への影響が懸念される特定のセクターへのファイナンスにおけるポリシーを定めるとともに、ファイナンスの対象となる事業の環境・社会に対するリスクまたは影響を特定し、評価するためのデューデリジェンスのプロセスを導入しています。 ・標準デューデリジェンス お客さまを担当する法人担当部署が、ファイナンスの対象事業が「ファイナンスを禁止する事業」または「ファイナンスに際して特に留意する事業」に該当しないか、お客さまからご提供いただく情報等に基づき判断 ・強化デューデリジェンス 「ファイナンスに際して特に留意する事業」に該当する場合、環境・社会に対するリスクを管理する部署等が評価を実施 ・経営階層による評判リスクに関する協議 MUFG の企業価値を大きく毀損する可能性があると判断 される場合、マネジメントが参加して対応を協議
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気候変動リスクをトップリスクの一つとして位置付け、リスク管理を行おうとしていることを評価。一方で、具体的なリスク管理方法として設定している「MUFG環境・社会ポリシーフレームワーク」において、新設の石炭火力発電所へのファイナンスは原則として実行しない、としつつ、例外を設けており、例外の適用が懸念されている。また、新たに、石油・ガスセクターのオイルサンド、北極開発において、開発地域における生態系や先住民族の地域社会への影響等、お客さまの環境・社会配慮の実施状況を確認することを追加しているが、ファイナンスの制限には至っていないことから、制限を含めた今後のさらなる厳格化が望まれる。
科学の知見では、パリ協定の1.5度目標達成のためには、新規の石炭火力発電所の建設は許容できず、既存のものも含めて2030年までに(世界では2040年までに)全廃すべきとされている、また、新規の化石燃料設備の建設も許容できないとされている。この科学的知見に対して不十分ながらも、石炭火力のプロジェクトファイナンスの与信残高を2040年までにゼロとする定量目標を掲げた2行に比べ、<MUFG>はそのような目標すら掲げていない。どのようなプロセスを経て現行のポリシーに関する判断がなされたのか、またリスク管理として<MUFG>が十分だと考える根拠は何かの記述がない。今後さらなるポリシーの厳格化(石炭火力のバリューチェーン全体に及ぶコーポレートファイナンスへの規制、1.5度目標と整合的なフェーズアウト戦略を含む)を期待するとともに、判断プロセス・根拠の開示も期待する。
Stakeholder dialogue serves as the basis for the analysis of climate-related risks and opportunities SRI(社会的責任投資)投資家、アドボカシーNGO、世論調査などにより、気候関連リスクと機会を特定。 The CSR Function and the Risk Function work together to identify and manage climate-related risks. The CSR Function identifies climate-related risks and opportunities by maintaining a dialogue with external stakeholders, and particularly the scientific community, and with Group clients. The Risk Function, in its role as the Group’s contact with banking industry regulators and supervisors, takes note of the climate-related risks reported by these authorities. The business lines, working directly with clients, serve as the first line of defence and, as such, are directly involved in the identification and analysis of climate-related risks and opportunities. As the second line of defence against ESG risks, the Risk Function continued its efforts in 2019 to adapt the framework, processes and governance of Credit Committees to include systemically an ESG risk analysis (including climate and energy-related risks) incurred by the Group’s non-financial corporate clients. CSR部門とリスク部門が協働し、気候関連リスクの特定と管理を行う。CSRはサイエンスコミュニティなど外部ステークホルダーとの対話により、リスク部門は監督機関との対話により行う。ビジネス部門はクライアントと直接的なやり取りを通じて、またリスク部門はクレジット委員会のESGリスク管理フレームワークを設定。 In 2019, the Group CSR function was solicited for an expert opinion on the risk analysis of the ESG risks associated with 2,340 complex or high-risk transactions (finance, onboarding, export services,etc.) versus 1,627 transactions last year in 2018. ESG risks, including in particular climate-related risks, have been effectively incorporated in all BNP Paribas risk management systems • the General Credit Policy, expanded in 2014 to include CSR clauses; • 22 specific credit and rating policies now containing ESG criteria, including some climate-related criteria; • establishment of finance and investment policies (“sectoral policies”)governing its businesses in sectors involving major energy and climate-related issues such as: coal-based electricity generation; mining industry; palm oil production; paper pulp production; agriculture; unconventional hydrocarbons. • observation of the Equator Principles in the conduct of major manufacturing and infrastructure projects; • development and use of risk management and oversight tools (including questionnaires for business operations subject to prominent risks, including a general control plan; • CSR metrics included in the BNP Paribas “Risk Appetite Statement” (RAS)
指標と目標
移行リスクおよび物理的リスクが事業に及ぼす、短期・中期・長期の影響を評価するために使用し た測定基準(指標)の開示 | ||||
投融資先(スコープ3)のGHG排出量、および関連するリスクの開示 | ||||
気候関連のリスクと機会を管理するための目標および進捗の記述 | ||||
目標のパリ協定との整合性 | ||||
SBTiやその他のパリ協定と整合的なイニシアティブへのコミットメント |
該当箇所とコメント
該当箇所
● 目標 − サステナブルファイナンス・環境ファイナンス目標:2019 年度~2030 年度累計 25 兆円(うち環境ファイナンス 12 兆円) なお、2019 年度の実績(速報値)は、サステナブルファイナンス 2.4 兆円、うち環境ファイナンスは1.1 兆円 − 石炭火力発電所向け与信残高削減目標:2030 年度までに 2019 年度対比 50%に削減し、2050 年度までに残高ゼロとする(2019 年度末与信残高 2,995 億円) − 自社の環境負荷低減目標 ● モニタリング指標 − Scope1(直接)・Scope2(間接)のCO2排出量とエネルギー使用量、 Scope3(出張)のCO2排出量・新規の大規模発電プロジェクトに関する環境負荷(CO2排出寄与量) − 新規の大規模発電プロジェクトに関する環境保全効果(CO2排出削減寄与量) ■ SBT(科学的根拠に基づく排出削減目標)については、金融機関向けのSBTiロードテストに参加し、算定方法に係る課題について意見を発信する等、検討継続
350 Japan コメント
TCFD提言では、銀行は気候関連リスク(移行リスクおよび物理的リスク)が貸出およびその他の金融仲介事業に及ぼす、短期・中期・長期の影響を評価するために使用した測定基準(指標)を開示し、当該測定基準(指標)の情報は、与信エクスポージャー、保有株式・債券、トレーディング・ポジションについて、業種、地域、信用力(例:投資適格か投資不適格か、社内格付システム)、平均残存年数の項目別に関連付けることが望ましいとされている。移行リスクおよび物理的リスクの算定方法に関するさらなる開示が望まれる。
<みずほ>が邦銀として初めて石炭火力発電所向け与信残高の削減目標を発表したことは歓迎する一方で、プロジェクトファイナンスに限っており、コーポレートファイナンスが含まれていないこと、2050年度ゼロ(2020年度株主総会では2040年度ゼロを達成できると発言)という期限がパリ協定の目標と整合的でないこと(2030年まで、世界全体で2040年までに全廃が必要であり、償還後数十年間稼働することを踏まえ、与信残高はより早期にゼロにすべき)、石炭火力発電所に限っており、その他の炭素集約度の高いセクターが除かれていることなど課題は多く、今後のさらなる厳格化を期待する。
また、スコープ3(その他の間接排出量)の大規模発電プロジェクトに関するCO2排出量の公表は評価できる一方で、算出根拠を示すとともに、既存の取引先事業も含めることを期待する。
SBTの導入に向けた積極的な姿勢は評価でき、投融資先のポートフォリオにおけるCO2排出量の開示と目標設定を期待する。
該当箇所
● 2020〜2029年度のグリーンファイナンス実行額10兆円 ● 2029年度までに三井住友銀行のCO2排出量を2018年度対比30%削減 ● 2040年度を目処に石炭火力発電向け貸出金の残高ゼロ(プロジェクトファイナンスが対象*)*カーボンリサイクルに資する技術を付した案件等、脱炭素社会への移行に向けた取組に資する案件は除外"
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“今般、統合報告書の中で<SMBC>が石炭火力発電所向け与信残高の削減目標を発表したことは歓迎する。一方で、プロジェクトファイナンスに限っており、コーポレートファイナンスが含まれていないこと、2040年度ゼロという期限がパリ協定の目標と整合的でないこと(2030年まで、世界全体で2040年までに全廃が必要であり、償還後数十年間稼働することを踏まえ、与信残高はより早期にゼロにすべき)、石炭火力発電所に限っており、その他の炭素集約度の高いセクターが除かれていることなど課題は多く、今後のさらなる厳格化を期待する。
また、今後、スコープ3には投融資先ポートフォリオにおけるCO2排出量を含め、実績と目標を公表することを期待する。
該当箇所
● サステナブルファイナンス目標(2019年度から2030年度までに累計20兆円。うち、環境分野で8兆円) ● 発電事業*へのプロジェクトファイナンスにおけるCO2排出量原単位(融資分に相当するCO2排出量/融資分に相当する発電量)の計測結果を公表しており、2019年度(4~12月)は0.394 t-CO2 /MWhとしている。*化石燃料(石炭・石油・ガス)火力発電、および再生可能エネルギー発電事業を対象。 ● 2019年度末時点で3,580百万米ドルの石炭火力発電向けプロジェクトファイナンスの貸出金残高を2030年度に2019年度比 50%削減、2040年度を目途にゼロにする(但し、MUFG 環境・社会ポリシーフレームワークに基づき、脱炭素社会への移行に向けた取り組みに資する案件は除外)
350 Japan コメント
プロジェクトファイナンスに限っているとはいえ、融資先のCO2排出量原単位を初めて公開したことは評価できる。(なお、世界平均よりも少ないものの、BNPパリバと比較すると排出量が多くなっている。BNPパリバの項目を参照)今後は、プロジェクトファイナンスに留まらないスコープ3排出量(投融資先ポートフォリオにおける排出量)の把握および定量的な目標設定が期待される。また、電源別の内訳も明らかにすることが望まれる。
今般、サステナビリティレポートの中で<MUFG>が石炭火力発電所向け貸出金残高の削減目標を発表したことは歓迎する。一方で、プロジェクトファイナンスに限っており、コーポレートファイナンスが含まれていないこと、2040年度ゼロという期限がパリ協定の目標と整合的でないこと(先進国で2030年まで、世界全体で2040年までに全廃が必要であり、償還後数十年間稼働することを踏まえ、貸出金残高はより早期にゼロにすべき)、石炭火力発電所に限っており、その他の炭素集約度の高いセクターが除かれていることなど課題は多く、今後のさらなる厳格化を期待する。
With 46.7% fossil sources (gas, coal and oil) and 31% renewable sources (hydro, wind, solar and other renewables), the electricity mix financed by BNP Paribas in 2019 has a lower average carbon footprint than that of the world mix, which consisted of 64% fossil sources and 26% renewable sources in 2018. The kWh carbon content financed by the Group is 299 gCO2e, compared with the world average of 476 gCO2e in 2018 (source: IEA). Following the implementation of progressively more stringent financing policies, the percentage of coal in the mix has fallen significantly, and is on track to hit zero by 2030 in the OECD and by 2040 in the rest of the world, i.e. ahead of schedule relative to the IEA’s SDS. Looking at the primary energy mix financed by the Group, the percentage of coal in the mix has steadily dropped since 2017, thanks to the implementation of the coal policy, and only made up 2.4% of the primary mix in 2019. On a forward-looking basis, BNP Paribas also keeps track of its energy mixes over the longer term, through 2050 as shown in the figure below.(P.40) また、パリ協定の目標に整合的な融資ポートフォリオ(loan book)のあり方に関する定量的な目標設定に向けて、カトヴィツェ宣言を行なった他の銀行とともにツールを開発中。2 Degrees Investing Initiativeと共に five high-carbon sectors (extraction of fossil fuels, electricity generation, transport, steel production and cement production)を対象。最初のテストではそれぞれのセクターの大部分(融資残高の80%以上に相当)を対象にした。(P.44)
みずほFGおよびSMBCが石炭火力発電所向け与信残高の削減目標を2040年度までにゼロにすると発表した(注8)ことは歓迎するが、石炭火力発電所向けのプロジェクトファイナンスに限っており、石炭セクター全体に渡るコーポレートファイナンスが含まれていないこと、パリ協定の目標と整合的な時間軸でないこと(先進国で2030年まで、世界全体で2040年までに全廃が必要であり、償還後数十年間稼働することを踏まえ、与信残高はより早期にゼロにすべき)からさらなる目標の強化が必要である。また、石炭火力以外の炭素集約度の高いセクターも視野に入れるべきである。
また、融資先ポートフォリオの排出量(スコープ3)については、MUFGがプロジェクトファイナンスに限っているとはいえ、融資先のCO2排出量原単位を初めて公開したことは評価できる。今後は、プロジェクトファイナンス以外の融資先ポートフォリオの排出量の把握と開示が期待される。また、みずほFGはSBT(科学的根拠に基づく目標)の導入を検討しており、こちらの進展が期待される。
まとめと提言
3行のTCFD提言に沿った開示には前年度と比べて進展が見られ、特に気候関連リスク(移行リスク、物理的リスク)のシナリオ分析や石炭火力発電所向けの与信残高の削減目標の設定など、NGOの提言を一部取り入れた改善が見られたことは歓迎します。
一方で、先進事例とされているBNPパリバと比べるとシナリオ分析のスコープの広さ、高リスクのセクターに対するリスク管理方法などに大きな開きを認めざるを得ません。
特に、パリ協定の目標と整合的な石炭セクター全般にわたるコーポレートレベルでの規制強化と、フェーズアウト戦略の構築が求められます。
シナリオ分析(移行リスク・物理的リスク)比較
移行リスク
対象地域 | 国内 | グローバル | 記載なし | グローバル | グローバル |
対象期間 | 2050 年まで | 2050年まで | 2050年まで | 5年間 | 明記なし |
シナリオ | 1. IEAの持続可能な開発シナリオ(2℃シナリオ)
2. 新政策シナリオ(4℃シナリオ) 顧客の業績影響予想は、事業構造転換のないStatic シナリオと事業構造転換を行うDynamic シナリオの 2 通り | 1. IEAの持続可能な開発シナリオ(2℃シナリオ)
2. 新政策シナリオ(4℃シナリオ) | 1. IEAの持続可能な開発シナリオ(2℃シナリオ)
2. 新政策シナリオ(4℃シナリオ) | 明記なし (ただし、気候シナリオ分析には主に、IEAの持続可能シナリオ、IPCCおよびフランスのEpE’s ZEN2050 analysisを主に採用していると記載) | リンク先を参照 |
対象範囲 | 1. 電力セクター
2. エネルギー(石油・ガス、石炭)セクター | 1. 電力セクター
2. エネルギーセクター | 1. 電力セクター
2. エネルギーセクター | 1. エネルギーセクター 2. その他の温室効果ガス高排出セクター 移行リスクに含まれるのは、信用リスク、市場シェアの喪失リスク、自社の業務に関わるリスク、評判リスク、法的リスク。 | BNP Paribas Asset Management は、石油産業と内燃機関自動車を再生可能エネルギー産業と電気自動車を比較する調査を実施。 |
結果 | 2050年までの与信コストが約 1,200 億円(Dynamic シナリオ)~3,100 億円(Static シナリオ)の増加。 | 持続可能な開発シナリオでは、新政策シナリオと比べ、2050 年までの単年度で 20〜100億円程度の与信関係費用の増加が見込まれる試算。 | 移行リスクは、単年度ベースで数10億円程度。 | BNPパリバのビジネスモデルは、エネルギー転換に伴うリスクに対して、ポートフォリオのセクター、地理的分類、移行リスクへの対応の面で、レジリエントであるとの結果。 | 調査の結果、自動車セクターにおいて、石油が長期的に競争力を保つための採算価格は1バレル当たり10〜20米ドルと試算。再エネが石油需要の40%を代替するとの試算。(リンク先参照) |
物理的リスク
対象地域 | 国内 | 国内 | 記載なし | グローバル | グローバル |
対象期間 | 2050年まで | 2050年まで | 2050年まで | 明記なし | 2050年まで |
シナリオ | 1. IPCCのRCP8.5シナリオ(4℃シナリオ)
2. RCP2.6シナリオ(2℃シナリオ) | 1. IPCCのRCP8.5シナリオ(4℃シナリオ)
2. RCP2.6シナリオ(2℃シナリオ) | 1. IPCCのRCP8.5シナリオ(4℃シナリオ)
2. RCP2.6シナリオ(2℃シナリオ) | 明記なし (ただし、気候シナリオ分析には主に、IEAの持続可能シナリオ、IPCCおよびフランスのEpE’s ZEN2050 analysisを主に採用していると記載) | IPCCのRCP8.5シナリオ |
対象範囲 | 水災に伴う国内の担保不動産(建物)の損傷に起因した与信コストへの直接影響(担保価値影響)と間接影響(事業停滞影響)を分析 事業停滞影響は本社所在地ベース(中堅中小企業が対象) | 水災に伴う国内事業法人における担保価値の毀損、財務状況の悪化に伴う債務者区分の劣化 により増加が予想される与信関係費用(信用コスト) | 水害の発生による与信ポートフォリオ全体への影響を計測 | 物理的リスクに晒されている9つのセクターへのエクスポージャーが高い上位10企業ずつ。対象セクターは、①公益事業(ユーティリティ)、 ②テクノロジー・ハードウェアおよび機器、③運輸、④半導体、⑤医薬品・バイオテクノロジー・ライフサイエンス、⑥素材、⑦自動車・自動車部品、⑧資本財、⑨食品・生活必需品小売り。 業務関連リスク、サプライチェーンリスク、市場シェアの喪失の3つのリスクを特定し、点数化。対象リスクイベントは、Heat stress, Water stress, Floods, Sea level rise, Hurricanes&Typhoons. | また、BNP Paribas Cardifは、自社が直接所有する資産が晒される物理的リスクについて分析。7つの気候リスクイベント(fires, cold waves, heat waves, water stress, coastal and inland floods, and hurricanes)がポートフォリオ企業の業務に与える影響を分析。ポートフォリオ企業ごとに1(低リスク)~100点(高リスク)で評価。 |
結果 | 2050年までの与信コストは、担保価値影響は限定的。 事業停滞影響は、2℃上昇前提でも、4℃上昇前提でも最大 520 億円程度。 | 累計 300〜400 億円程度。 これは単年度平均値でみると 10 億円程度の追加的な与信関係費用の発生であり、影響は限定的。 | 物理的リスクは、単年度ベースで数10億円程度。 | 100点満点のうち全体で42点となり、リスクは比較的低いと分析。この結果、半導体、テクノロジー・デジタル機器、製薬セクターでリスクが高く、前者2セクターはバリューチェーンが物理的リスクの高いアジア地域で生産されていること、製薬セクターでは水、エネルギーの利用に依存していることなどが理由としてあげられている。また、Water stress, Heat stress, Floodsのリスクに晒される危険が高いと分析。 | Cardif:79%のポートフォリオ企業が低リスク(1〜10点)評価。本分析は、どの企業が今後の気候変動戦略を慎重に観察するウォッチリストに入るかを特定するのに役立つ。また、Cardif社のポートフォリオを最も大きなリスクに晒す気象イベントを特定するのに役立つ。この結果、他の気象イベントに比べてfires, heat waves and water stressが最もリスクが大きい(しかし、依然として低いリスク)。 |
資料リンク(引用・出典・参考)
注 | 資料リンク・コメント |
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1 | みずほFGの統合報告書 |
1 | みずほFGのTCFDレポート |
1 | SMBCグループの統合報告書 |
1 | SMBCグループのTCFDレポート |
1 | MUFGの統合報告書 |
1 | MUFGのサステナビリティレポート |
2 | TCFD最終報告書は環境省HP に掲載されているサステナビリティ日本フォーラム訳を参照した。 |
3 | BNPパリバのTCFDレポート |
4 | 3行は2019年9月に発足した国連責任銀行原則(PRB)に署名している。PRBでは、ビジネス戦略をパリ協定と持続可能な開発目標(SDGs)に整合させることを謳っている。 |
5 | SMBCは対象地域をグローバルとしている。 |
6 | IEA Sustainable Development Scenario |
6 | 気候ネットワーク ポジション・ペーパー2019:CO₂回収・利用・貯留(CCUS)への期待は危うい |
7 | IPCC(2019)によれば、農業、林業、その他土地利用による排出量が、人間活動による排出量の約23%を占めており、このうち、熱帯林減少による排出量が最も問題であるとされた。また、再エネ扱いされるパーム油によるバイオマス発電は、森林破壊や温室効果ガス排出の観点から再エネとして定義すべきでないとNGOから指摘されている。RAN声明:メガバンクのTCFD開示、森林破壊リスクの視点から不十分 (2019/10/11) |
8 | みずほFGは同社の2020年度株主総会にて同目標を2040年に前倒しする趣旨の発言を行なっている。 |